クラミジアに感染すると咳やのどの痛みなど、かぜのような症状が出ることがあります。
中には咳が出ることから「これってクラミジア?」と不安に感じる方もいるかもしれません。
クラミジアには性器やのどに感染して性病を引き起こす菌と、呼吸器(鼻・のど・気管支・肺)に感染して炎症を引き起こす菌があり、感染経路はまったく別で、症状にも違いがあります。
そこで本記事では2つのクラミジアを比較しながら、症状や感染経路、検査・治療方法、予防法について見ていきます。
「ばんどうクリニック堀切菖蒲園駅前」院長であり泌尿器科専門医かつ性感染症認定医である坂東監修の内容となっておりますので、ご参考になれば幸いです。
他にもストレスが原因で性病に感染?性行為なしでもクラミジアに!?やクラミジアの治療中にNG行為とは?|治療費用や放置リスクは?について気になる方はこちらの記事も合わせてご覧ください。
1、クラミジアで咳が出る2つの場合|クラミジア肺炎と咽頭クラミジア
咳が出るけどこれってクラミジア?と不安に思っている方もいるでしょう。
(1)クラミジアとは
人に感染するクラミジア菌は主に2種類あり、1つは性病を引き起こすクラミジア・トラコマチス、もう1つは呼吸器の炎症を引き起こすクラミジア・ニューモニエです。
その他、鳥(とくにオウム・インコ類)からうつるクラミジア菌もありますが、感染はまれです。
普通クラミジアと言えばクラミジア・トラコマチスが引き起こす性病を指し、正式には性器クラミジア感染症(のどの場合は咽頭クラミジア感染症)と呼ばれます。
一方、クラミジア・ニューモニエの感染症はクラミジア肺炎(または肺炎クラミジア感染症)と言います。
(2)咳が出る場合はクラミジアに感染している可能性あり
クラミジア感染で咳が出るとしたらクラミジア肺炎か、咽頭クラミジアと考えられます。ただし咽頭クラミジアは一般的に無症状の場合が多く、症状があってもごく軽いのが普通です。したがって、しつこい咳が続くようであれば咽頭クラミジアよりクラミジア肺炎の可能性のほうが高いでしょう。
以下ではクラミジア肺炎と咽頭クラミジアについてくわしく見ていきます。
2、クラミジア肺炎とは
クラミジア肺炎はクラミジア・ニューモニエの感染により上気道(鼻・のど)、気管支(のどから肺への通り道)、肺に炎症が生じる病気です。まず上気道が感染し、徐々に肺へ伝わります。子供から高齢者まで幅広く感染が見られます。
(1)クラミジア肺炎の症状
最もよく見られる症状は乾いた咳(たんの絡まない咳)です。しつこい咳が3週間以上続くことも珍しくありません。感染が肺に達すると、たんが絡んだ咳が出る場合があります。
のどの痛み、しわがれ声、鼻水、鼻づまり、呼吸困難なども見られます。微熱が出ることもありますが、38度を超えることはまれです。
症状がまったく出ない(自覚されない)場合もよくあります。
(2)クラミジア肺炎を放置するとどうなるのか(自然治癒するか)
高齢者や基礎疾患を持つ人の場合は重症化することがありますが、一般的には軽症ですみます。軽症であれば治療をしなくても自然に治る病気ですが、せきなどの症状が長引くケースが少なくありません。
(3)クラミジア肺炎の感染経路
人から人へ飛沫感染で移ります。クラミジア肺炎にかかった人が咳やくしゃみをすると、つば・鼻水と菌が混じった細かい飛沫が飛び散ります。これを吸い込むことで感染が起こります。
家族内で感染が広がったり、幼稚園・小中学校、高齢者施設などで集団発生したりすることがよくありますので、注意が必要です。季節にかかわらず一年中感染が発生します。
(4)クラミジア肺炎の治療方法
抗菌薬(マクロライド系、テトラサイクリン系、ニューキノロン系の抗生物質)を用いた治療が一般的です。
通常は飲み薬が処方されます。1週間程度の服用で治りますが、再発する可能性があるため、2週間程度服用を続けるのが望ましいとされています。咳が激しい場合は咳止めも合わせて処方されますが、症状が重い場合は入院による点滴治療などが行われます。
症状がピークを過ぎていると診断された場合、咳止めなどで症状を軽減する治療(対症療法)を行い、経過を見ながら自然治癒を待ちます。
3、咽頭クラミジアとは
咽頭クラミジアはクラミジア・トラコマチスが咽頭(のど)に感染することで生じる性感染症です。
(1)咽頭クラミジアの症状
無症状のケースが大半で、症状があるとしてものどの違和感や軽い咳程度のことがほとんどです。一部の患者では上咽頭(のどの上の方)に炎症が起こり、耳に何か詰まった感じ、難聴、鼻づまり、のどの痛み、首のリンパ節の腫れなどが見られます。
なお、母親が性器クラミジア(クラミジア・トラコマチス)に感染していると分娩時に3~20%の確率で新生児にうつり、肺炎をきたします。大人の場合、クラミジア・トラコマチスで肺炎になる(つまり咽頭クラミジアが肺まで広がる)ことは極めてまれです(ただし病気などで免疫が低下していると起こりやすくなります)。
(2)咽頭クラミジアを放置するとどうなるのか(自然治癒するか)
放っておいても無症状・軽症のままというケースが多いものの、自然に治るということはありません。そのため、感染に気づかないまま性行為により他の人にうつしてしまうことがよくあります。
(3)咽頭クラミジアの感染経路
クラミジアに感染した性器や直腸にオーラルセックスを行うことで感染するケースがほとんどです。キスをした際に病原菌を含む唾液などを飲み込み、それが原因で感染するという可能性もないわけではありませんが、普通にキスするだけで感染するリスクは非常に低いでしょう。
オーラルセックスという行為が一般化するにつれて咽頭クラミジアは増加し、とくにフェラチオをメインとする性風俗(ヘルスなど)に従事する女性の間では感染率が高いことが知られています。
さらに、近年では一般の若い女性の感染率が性風俗に従事する女性の感染率と同程度になってきているとも言われています。
(4)咽頭クラミジアの治療方法
飲み薬の抗菌薬(マクロライド系、テトラサイクリン系、ニューキノロン系の抗生物質)が用いられます。性器への感染では1-7日の飲み薬が処方されるのが一般的ですが、咽頭の場合は性器よりも治りにくく、2倍程度の治療期間がかかると言われています。
パートナーも性器などに感染しているおそれが高く、実際にそうであれば自分だけ治療してもパートナーから再感染してしまいますので、咽頭クラミジアと診断されたらパートナーにも診察を受けてもらうことが必要です。
4、咳が出て不安ならクラミジアの検査を!
クラミジア肺炎は重症でなければ放っておいても最終的には自然治癒しますが、症状が長引くケースが多いため、早めに治療するのが得策です。咽頭クラミジアは症状がおさまったとしても自然には治らず、パートナーなどに感染を広げてしまう可能性が高いため、こちらもなるべく早く治療したいところです。
不安な症状がある場合は医療機関を受診するか、郵送キットによる検査を受けてみることをおすすめします(ただし郵送検査が可能なのは咽頭クラミジアのほうだけです)。
(1)クラミジア肺炎の検査
クラミジア肺炎の検査方法は、細菌を培養して調べる方法や血液検査が行われます。
細菌を培養する検査では、まず綿棒でのどの粘液をぬぐいとり、粘液のなかにいる細菌を培養して病原菌を探します。血液検査では、血液から血清を分離し、そのなかに病原体の遺伝子や抗体(免疫の働きで作られる分子)があるかどうか調べます。
ただし、どの検査法も少し時間がかかったり、検出能力があまり高くなかったりするという難点があります。
クラミジア肺炎と似たような症状を持つ感染症にマイコプラズマ肺炎と百日咳があり、この3つは同じ系統の薬(マクロライド系・キノロン系の抗生物質)で治療できるため、問診と胸部X線撮影(レントゲン撮影)で3つのうちのいずれかに感染していると判断されれば病原菌検出は行わずに治療に入ることもあります。
(2)咽頭クラミジアの検査
まず綿棒でのどの粘液を拭い取るか、患者さんにうがいをしてもらいます。そうして採取した粘液・うがい液を用いて、病原体の遺伝子を検出するテストを行います。
綿棒を差し入れてのどを拭う方法は患者さんにとって苦痛であるため、病院・クリニックではうがい液を用いるのが一般的です。
咽頭クラミジアは市販の郵送キットでも検査できます。この場合もうがい液で検査します。通信販売で郵送キットを購入し、自分でうがい液をとって送り返すだけなので手軽です。
性病の検査で病院や保健所に出向くのははばかられるという方は郵送検査キットを利用するとよいかもしれません。ただし、医療機関の保険診療よりも高額です(保健所であれば無料・匿名で検査を行っているところもあります)。
5、クラミジア肺炎・咽頭クラミジアの予防方法
クラミジア肺炎の予防はかぜやインフルエンザの予防と同じで、こまめなうがい・手洗いや咳エチケットが基本です。集団発生が起こっている場合はとくに注意が必要です。
咽頭クラミジアを予防するには、感染した性器などに直接触れないのが一番です。コンドームを使用すればペニスからのどにうつるのを予防するのに効果的です。女性器や肛門にはオーラルセックスをしないか、ラップなどを被せてから行うといった工夫をするしかないでしょう。
また、逆の方向の感染(のどのクラミジアから性器のクラミジアへの感染)も注意しなければなりません。パートナー間でうつしあって、結局2人とものど・性器の両方に感染している例も少なくありません。
6、まとめ
クラミジア肺炎と咽頭クラミジアはどちらも咳やのどの痛みなどのありふれた症状しか引き起こさないことが多いため、ただのかぜだと思い込んだり、そのうち治ると高をくくって放置してしまったりすることがあります。
また、クラミジア肺炎は咳が続くため病原菌をまき散らしてしまいやすく、咽頭クラミジアは症状が軽微ないし無症状であることから気づかないまま感染を広げてしまいやすいという問題もあります。
気になる症状があるかたや、感染につながる行動をした(感染しやすい環境にいた)という思い当たりがあるかたは、早めに検査を受けてみることをおすすめします。
他にも性病の検査費用は?安く手軽な検査方法や治療法について気になる方はこちらの記事も合わせてご覧く
記事監修
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東京慈恵会医科大学での泌尿器科診療をはじめ、内科や、腹腔鏡手術や内視鏡手術などの先端医療、皮膚科専門医の指導を受け皮膚科疾患診療にも従事。
〈資格〉日本泌尿器科学会 専門医・指導医/日本がん治療認定医/日本性感染症学会 認定医/日本医師会認定 産業医/泌尿器腹腔鏡技術認定医/難病指定医/緩和ケア研修終了/ 〈所属学会〉日本泌尿器科学会/日本内科学会/日本皮膚科学会/日本透析医学会/日本性感染症学会/日本泌尿器内視鏡学会/
http://bando-clinic.com/
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