性器ヘルペスに感染すると?感染者数や経路、対処法について

性器ヘルペス 感染

性器ヘルペスは比較的感染者数が多い性病です(男性はクラミジア、淋病に次いで3位、女性はクラミジアに次いで2位)。
再発しやすく、知らない間に感染しやすいというやっかいな性質があり、強烈な痛みを伴う症状が出る場合もあります。

本記事では、性器ヘルペスに感染してしまったかもしれないという方や、性器ヘルペスについてよく知らない方のために、

  • 性器へルペスの感染者数の推移と現状
  • 性器ヘルペスの症状とは?感染したら気づくのか
  • 性器ヘルペスの感染経路
  • 性器ヘルペスに感染した時の対処法
  • 性器ヘルペスの感染予防法

などについて紹介します。

「ばんどうクリニック堀切菖蒲園駅前」院長であり泌尿器科専門医かつ性感染症認定医である坂東が監修した内容ですので、ぜひ参考にしてください。

1、性器ヘルペスの感染者数の推移と現状

近年の性器ヘルペスの感染者数(医療機関から届け出られた数)は図1のように推移しています。2006年あたりに大きな減少が見られますが、これは届出の基準が「明らかな再発は除く」と変更されたことが影響しています。
それ以降は少々増加傾向にあるようです。

図1:定点医療機関(国の調査のために定期的に感染発生状況の届出を行っている機関)の性器ヘルペスウイルス感染症報告数(定点当たり報告数=全報告数÷定点医療機関数)
出典:性器ヘルペスウイルス感染症の発生動向、2018年|国立感染症研究所

上の図にも表れている通り、性器ヘルペスの感染者数は一貫して男性より女性の方が多いのが特徴です。年齢層別に見ると(図2)、女性ではとくに20代~30代前半、男性では20代後半~40代前半で感染者が多く、女性の30代~50代、男性の40代~50代という比較的高い年齢層で増加傾向がうかがわれます。

図2:定点医療機関の男女・年齢層別性器ヘルペスウイルス感染症報告数
出典:同上

2、性器ヘルペスの症状とは?感染したら気づくのか

性器ヘルペスは感染しても症状が出ない(あるいは軽すぎて自覚されない、医師も見落とすほど軽い)ケースが大半(70~80%)です。

発症する場合、症状の出方には3つのパターンがあります。

1 感染から2~10日後に発症(初感染初発)
2 感染時には発症せず、何らかの刺激や免疫低下に誘発されて発症(非初感染初発)
3 1または2の症状がいったん治まった後に再発

性器ヘルペスの病原体は性器などに感染し、その後神経を伝って神経の奥に侵入して潜伏し続けます。感染時に免疫がウイルスに勝れば発症しません。

以下で詳しく見ていきましょう。

(1)初感染初発(感染後2~10日後に発症)の症状

①男性の症状

性器の表面に直径1~2mmの水ぶくれが密集して発生し、かゆみや違和感を伴います。
とくに発症しやすいのは亀頭や陰茎部です。
肛門性交で感染した場合は肛門周囲や直腸にも同様の症状が出ます。

発症後3~5日で水ぶくれが破れて融合し、ただれて痛みます。
発症後1週間前後に最も症状が重くなります。

水ぶくれに加え、全身の倦怠感、鼠径部(太ももの付け根)のリンパ節の腫れ、尿道分泌物などの症状が出ることもあります。

②女性の症状

外陰部、とくに大陰唇・小陰唇や膣前庭(小陰唇に囲まれた部分)、会陰部(性器と肛門の間)に、潰瘍(皮膚が軽くえぐれたりただれたりした箇所)や水ぶくれが多数生じます。
子宮頸管(子宮入り口の管状の部分)や膀胱にも感染が及ぶことがあります。

潰瘍や水ぶくれは急激に生じ、強い痛みを伴います。
排尿や歩行が困難になるほどの強烈な痛みになることもあります。

全身の倦怠感や38度以上の高熱、鼠径部リンパ節の腫れ・痛みなども見られるため、これらの症状を発見した時は性器ヘルペスの感染を疑ってみてください。

(2)非初感染初発(感染時は無症状、免疫低下などにより発症)の症状

病気や疲労、ストレス、月経などで免疫が低下したり、性交などで性器に刺激が加わったりしたときに潜伏中の病原体が活性化し、発症します。
感染時に発症する場合と同様の症状が現れますが、程度はあまり重いものではありません。ただし、免疫不全患者や高齢者では症状が重くなります。

(3)再発の症状

①男性の症状

初めて発症したときとほぼ同じ部位、または臀部・太ももなどに、水ぶくれや潰瘍が現れます。
症状は初めのときよりも軽いのが一般的です。

②女性の症状

性器や臀部、太ももに小さな水ぶくれや潰瘍ができますが、症状は軽く、1~数個にとどまるのが通例です。

再発が起こる直前に、外陰部の違和感や脚(太ももなど)の痛みといった前兆が現れることがあります。

3、性器ヘルペスの感染経路

ヘルペスの病原体(単純ヘルペスウイルス)には1型と2型があり、感染経路が異なります。
性器ヘルペスは主に2型の感染で起こりますが、1型が感染している例も少なくありません。

無症状でも感染部位の粘膜や体液・分泌物にウイルスが存在し、感染を引き起こす場合があります。

(1)単純ヘルペスウイルス1型の感染経路

1型は主に唇や口の周り、喉、扁桃、顔、上半身の皮膚に、水ぶくれや潰瘍を生じさせます。
一般によく知られている口唇ヘルペスは、1型ウイルスの感染によるものです。

病変部位、唾液、くしゃみ・会話などで飛んだ飛沫、ウイルスに汚染された手指・器具などが感染源となり、皮膚・粘膜が感染源に直に接触することで感染します。

幼少期から思春期までの間に、家族などの身近な相手を介して多くの人が1型に感染します。
かつてはほとんどの人が感染していましたが、現在では成人でも感染率が50%弱です。

1型はオーラルセックスや患部と性器の接触を介して性器に感染することもあります。
性器ヘルペスに初めて感染した患者の半数~7割が1型による感染です。
ただし1型の性器ヘルペスは再発しにくいという特徴があります。

(2)単純ヘルペスウイルス2型の感染経路

2型は主に性行為で感染し、性器ヘルペスを引き起こします。
病変部位(性器や肛門周辺、臀部)、体液、分泌物との接触が原因となり、2型が喉にうつり咽頭炎や扁桃炎を引き起こすこともありますが、顔や口唇に症状が出ることはあまりありません。

性行為以外でも、病変部位から出た分泌物に触れることで感染する可能性があります。
例えば、便座、浴槽、バス用品に付着した体液・分泌物を介して感染する例です。
ただし体外に排出されたウイルスの感染力は長続きしないため、性行為以外で感染する例は多くありません。

4、もしかして感染してる?性器ヘルペスの症状が出た時の対処法

性器ヘルペスの症状は放っておくと自然に治ります。
しかし、病気そのものが治ったわけではありません。
我慢できないほど強烈な症状が出るなど、症状が治まってもウイルスは潜伏し続け、しばしば再発します。
他の人にうつしてしまう危険もあります。

本章では、性器ヘルペスに感染したと思われる場合にどのような行動をすれば良いのかについて説明します。

(1)性器ヘルペスに感染しているかを確かめる

①医療機関で検査を受ける

主に泌尿器科(男性の場合)、婦人科(女性の場合)、皮膚科(性器以外に症状が出ている場合)などで検査を受けることができます。

症状を観察したり、患部から直接ウイルスのDNAを検出を調べたり、血液検査で抗体(免疫の働きでできる物質)を調べたりすることにより感染の有無を判断します。

②自宅で検査キットを使用する

検査機関から検査キットを取り寄せ、自宅で検査物を採取して送り返して検査してもらうタイプと、自分で検査まで行いその場で結果が出る簡易タイプがあります。

ただし、性器ヘルペスの検査・診断は専門医でも難しい場合があるため、日本の検査機関で検査キットを販売しているところは少ないようです。
簡易タイプは海外の会社のものが通信販売で購入できますが、検査の正確さの点で問題があります。そのため、あまり自宅での検査キットによる診断はおすすめしません。

(2)性器ヘルペスに感染していたら治療を受ける

感染した単純ヘルペスウイルスを根絶する治療は今のところ存在せず、症状が治まるのを早めたり、再発を抑制したりする治療が行われます。治療には抗ウイルス薬が使われます。

①初発(初感染初発・非初感染初発)の場合

通常は飲み薬を服用します。
治療期間は5~10日です。
重症の場合は点滴治療を7~10日かけて行うことがあります。

②再発の場合

初発の場合と同じく、飲み薬による治療が行われます(通例5日間)。
症状が軽い場合は塗り薬が用いられることもあります(5~10日間)。

再発の前兆(局部の違和感や脚の痛み)が出た時点ですぐに薬を服用すると再発を防げる場合があるため、あらかじめ患者に薬を渡しておくという方法もとられます。

再発の頻度が高い場合、性生活や生活一般への影響が大きく、感染拡大の恐れも大きいため、抗ウイルス薬を継続的に服用して発症を予防する抑制療法が行われます。
医師と相談しながら治療目標を立て、効果や副作用、服薬状況などをチェックしながら進める必要があります。

5、感染しないことが一番!性器ヘルペスの感染を予防するには

性器ヘルペスに感染していないのであれば、「現在は陰性だからこの先も感染したくない」という方がほとんどでしょう。
最後に、性器ヘルペスに感染しないための予防方法について紹介します。

(1)男性から女性への感染

男性器から女性器、口・喉、直腸などへの感染はコンドームの適正な使用で予防可能です。
ただし、男性器以外の病変についても注意しなければなりません。
口や喉、太ももやお尻などに症状が出ている相手との性行為には慎重になるべきです。オーラルセックスやキスで感染する可能性も忘れてはいけません。

ヘルペスは無症状でも感染力を持つことがあり、症状からの判断では不十分な場合があります。
不特定多数との性交渉は避けましょう。

(2)女性から男性への感染

コンドームは女性の性器や口・唇などから男性器への感染にも予防効果があります。
ただし、男性器の周囲や肛門に相手の女性の病変部位や体液、唾液が接触・付着することで感染につながる可能性がありますし、オーラルセックスや唇・舌での愛撫によって自分の口や喉にヘルペスがうつることもあるため、コンドームをつけたからと言って安心できません。

男性から女性への感染の場合と同じく、症状のある相手や不特定多数との性交渉を避けるのが原則です。

(3)同性間での感染

同性間の場合も異性間の場合ととくに変わりはありません。
肛門性交・オーラルセックスでのコンドームの使用や性行動の抑制を心掛けましょう。

(4)性行為以外での感染

便座やバス用品などを介した感染は、患部をガーゼで覆って物に直接触れないようにしたり、物の共用を避けたり、患部が直接触れた物を消毒・洗浄・洗濯したりすることで防ぐことができます。

性行為による感染ほどには神経質になる必要はありませんが、自身やパートナー・家族に症状が出ている場合はある程度注意しましょう。

まとめ

単純ヘルペスウイルスは一度感染すると神経内に潜伏し、折に触れて症状を引き起こすやっかいな存在です。
性器以外にも症状が出て感染源となり、自覚症状がなくても感染力を持つ場合があるため、感染が広がりやすい(知らない間にうつってしまう、うつしてしまう)という問題もあります。

性器ヘルペスは初感染初発で(とくに女性の場合)かなり強い症状が出ることがあります。
再発の可能性が高く、頻繁に再発すると性生活に大きく支障をきたし、ひいては生活全般に悪影響を与えかねません。

気になる症状や違和感がある場合は放置せず、早めに検査を受けて、治療や再発抑制、感染防止につなげてください。

記事監修

坂東 重浩ばんどうクリニック堀切菖蒲園駅前 院長
東京慈恵会医科大学での泌尿器科診療をはじめ、内科や、腹腔鏡手術や内視鏡手術などの先端医療、皮膚科専門医の指導を受け皮膚科疾患診療にも従事。

〈資格〉日本泌尿器科学会 専門医・指導医/日本がん治療認定医/日本性感染症学会 認定医/日本医師会認定 産業医/泌尿器腹腔鏡技術認定医/難病指定医/緩和ケア研修終了/ 〈所属学会〉日本泌尿器科学会/日本内科学会/日本皮膚科学会/日本透析医学会/日本性感染症学会/日本泌尿器内視鏡学会/

http://bando-clinic.com/

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