淋病に感染するとどうなる?症状・治療法と気をつけたい感染経路

淋病(淋菌感染症)はクラミジア感染症と並んで感染者数の多い性病です。女性が感染しても無症状のケースが多いため、「感染しても気づかない」「気づかないうちに感染を広げてしまう」「感染したけれど原因に心当たりがない」といったことになりがちです。

現在のところ有効な治療法が存在しますが、近年では治療薬が効きにくい「薬剤耐性菌」の発生が世界的に問題視されています。

日本と世界の感染状況を確認してから、淋病の症状、感染経路、検査・治療方法などを見ていきましょう。

1、淋病の感染者数の推移と薬剤耐性菌の問題

近年日本では淋病の感染者数が減少傾向にありますが、薬剤耐性菌の問題により今後世界的に淋病が蔓延する事態になる恐れもあると危惧されています。

(1)近年の感染者数の推移

淋病の感染者数(医療機関から感染が報告された数)の推移を見ると、2000年代初頭にピークがあり、それ以降は男性については概ね減少傾向が続き、女性については減少したのちほぼ横ばいとなっています(図1)。

図1:定点医療機関(国の調査のために定期的に感染発生状況の届出を行っている機関)の淋病報告数(定点当たり報告数=全報告数÷定点医療機関の数)
出典:淋菌感染症の発生動向、2018年|国立感染症研究所

減少しているとはいえ、淋病はクラミジアとともにいまだ感染者数の多い病気です。しかも、薬剤耐性(とくに多剤耐性)という深刻な問題により、今後は大幅な増加に転じるのではないか(もしかすると感染発生を制御できなくなるのでないか)と世界中で危ぶまれています。

(2)薬剤耐性菌の問題

細菌は一般的に人間などにくらべてずっと短い時間で進化する生き物ですが、淋菌はとくに進化しやすいことで知られています。

淋病に対してはこれまで様々な抗菌薬(抗生物質や合成抗菌薬)が使われてきました。淋菌にとってみれば、「命にかかわる毒」に常にさらされてきたわけです。そんな環境に生きる淋菌にとっては、「毒」に対する抵抗力を持つ細菌に進化すれば非常に有利になります。

医療の現場で大量の抗菌薬が使われた結果、実際に淋病のなかにそうした抵抗力(薬剤耐性)を持つものが現れ、そして現れるや否や急速に広まりました。

この事態に対処するために人間が新しい抗菌薬を投入すると、今度はそれに対する耐性を持った菌が生まれます。こうしたイタチごっこが続いた末に、複数の薬に抵抗力を持つ菌(多剤耐性菌)までが出現する事態となり、淋菌に有効な薬の種類が残り少なくなってしまったというのが現状です。

現在では、点滴による治療など有効な治療法が存在しますが、薬剤耐性がさらに進むと、抗菌薬では治らない淋病が生まれ、抗菌薬が開発される前の状況に戻ってしまうおそれもないわけではありません。

実際、2018年にはイギリスの男性が既存のどの抗菌薬も効かない「スーパー淋菌」に感染したという報道がありました(ただしその後この菌が広まったという話はないようです)。

2、淋病の症状とは?感染したら気づくのか

淋病は男性が感染すると明確な症状が出るのに対し、女性が感染すると症状が軽いか無症状のケースが多いという特徴があります。

(1)男性の症状

男性の主な症状は尿道炎です。淋菌に感染してから2~7日ほどすると、おしっこをしたときに痛み(排尿痛)が走り、尿道に黄白色の膿が溜まって尿道の先から漏れ出すようになります。

そのまま放置すると、精巣(睾丸)の横にある精巣上体(副睾丸)に感染が広がって炎症を起こし、陰嚢が大きく膨れます。歩くのが困難なほどの痛みが生じることがあり、全身が発熱することもよくあります。

(2)女性の症状

子宮頸管(子宮頸部の内側の、膣につながる狭い筒状の部分)に炎症が起こるのが一般的です。おりものの増加や出血が見られますが、男性の場合に比べて症状は軽く、自覚されないことがよくあります。そのため早期に受診しない女性が多く、感染してから症状が出るまでの期間(潜伏期間)はよくわかっていません。

卵管、卵巣、骨盤腹膜など、骨盤内の器官に炎症が起こることもあり、発熱や腹痛を来します。卵管の炎症を放置すると子宮外妊娠や不妊症の要因となるため、とくに注意が必要です。骨盤内の感染が重症化すると炎症が肝臓周辺にまで広がることもあります。

そのほか、尿道やバルトリン腺(膣を「濡らす」粘液を出す器官)などに炎症が起こり、膿が出る場合があります。

また、非常にまれですが、淋菌が血管のなかに入って全身に広がり、発熱や倦怠感、関節痛、皮膚の水ぶくれなどを生じさせることがあります(播種性淋菌感染症)。

(3)喉・眼・直腸に感染した場合

オーラルセックスにより咽頭(のど)が淋菌に感染することもあります。男女とも症状はほとんどないか無症状である場合が大半で、症状が出てものどの違和感や腫れといった程度で感染したことに気付きません。また、まれに眼に感染して結膜炎を引き起こします。

肛門性交で直腸に感染した場合は無症状が大半ですが、かゆみや痛み、下痢、血便などが見られることもあります。

3、淋病の感染経路

淋菌は人の体内以外では生存できないため、性行為によって感染するケースがほとんどです。淋病に感染した相手と性行為を行うと約30%という高確率で感染すると言われています。

本章では淋病の感染経路について解説します。

(1)性行為による感染

膣性交・肛門性交により性器と性器、性器と直腸の間での感染が起こる場合と、オーラルセックスにより性器・直腸と喉の間で感染が起こる場合があります。淋菌の場合は通常のキスだけで喉から喉に感染することはあまり考えられません。

淋病に感染しても症状が出ないことがよくあるため、無症状の相手と性行為をしていつの間にか感染するというケースがしばしば見られます。

咽頭淋病はオーラルセックスが一般化するにつれて増加しました。性器が淋菌に感染している男女の10~30%が咽頭の淋病にもかかっているというデータがあります。

フェラチオを主なサービスとする性風俗(ヘルスなど)に従事する女性の間では咽頭淋病の感染率がかなり高いことが知られており、風俗店を利用する男性の感染率も高いことが予想されます。

(2)母子感染

女性の場合とくに注意が必要なのが母子感染です。母親の子宮頚管が淋菌に感染していると分娩時に新生児に淋菌が移り、結膜炎を起こす危険があります。もちろん男性も未来の子どものために自分の感染には十分に気をつける必要があります。

4、もしかして感染してる?淋病の症状が出た時の対処法

まずは淋病かどうか検査で確かめる必要があります。淋病は自然治療することはありませんので、感染を広げてしまわないためにも早期に治療しましょう。治療薬で完治が可能です。

(1)淋病に感染しているかを確かめる

男性の場合はかなり特徴的な症状が出る場合が大半ですが、最終的には検査によって淋病かどうか判断します。女性の場合は淋病特有の症状に乏しく、クラミジア感染と区別がつきにくい場合が多いため、淋病とクラミジアの検査を同時に行って判定するのが一般的です。

男女ともに淋病・クラミジアの同時感染がかなりあることから、両方の検査を行うことが推奨されます。例えば、淋菌で尿道炎になっている男性の20~30%にクラミジアが併発していると言われています。

淋病感染が発覚したらパートナーにも検査を受けてもらいましょう。検査は病院や保健所で受ける方法と検査キットを使って自宅で行う方法があります。淋病は感染する機会が多いため、感染したのではないかと不安に思っている方も多いでしょう。とりあえず検査だけを手軽に行いたいという方には検査キットがおすすめです。

①病院・保健所で検査を受ける

男性の場合は尿の出始めの部分(初尿)を用いて検査するのが一般的です。女性の場合は細長い綿棒(スワプ)を膣の奥に差し入れて子宮頸管の粘膜をこすって分泌物を採取します。咽頭淋病が疑われる場合はうがい液(ガラガラとうがいをしてから吐き出した水)か、喉をを綿棒で擦って採取した粘液によって検査を行います。

そのようにして採集した検査材料に含まれる細菌を培養したり、細菌のDNAを増幅させたりすることによって淋菌感染の有無を判定します。DNA検査では淋菌とクラミジアを同時に調べることが可能ですが、薬剤の効き目(薬剤耐性の有無)を調べるには細菌培養が必要です。

②自宅で検査キットを使用する

検査キットを通信販売で購入し、自分で検査材料を採取して送り返すというのが一般的な流れです。

病院・保健所の検査と同じように、初尿、子宮頸管の分泌物、うがい液を採取します。子宮頸管分泌物を採取する際には、綿棒で子宮頸管を擦ったあと、綿棒の先が膣の粘膜に触れないように注意しながら引き抜くようにします。

(2)淋病に感染していたら治療を受ける

淋病の治療には抗菌薬が用いられますが、薬剤耐性の問題を十分に考慮して治療薬を選択することが求められます。

男性の尿道炎、女性の子宮頸管炎、咽頭・結膜・直腸への感染では、点滴または注射を1回行うだけで治療が終了するのが通例です。

男性の精巣上体炎、女性の骨盤内部の感染では、重症度により治療期間が異なり、点滴を数日から1週間にわたって繰り返し行う場合があります。播種性淋菌感染症では数日から1週間程度の点滴治療が行われます。

(3)完治後も再感染に注意する

抗菌薬が効けば淋病は完治しますが、1度感染しても十分な免疫がつかないため、何度でも再感染する可能性があります。予防意識を高め、ライフスタイルを見直すことが重要です。

5、感染しないことが一番!淋病の感染を予防するには

コンドームを使えばペニスへの感染とペニスからの感染を防ぐことができます。女性器や肛門・直腸にオーラルセックスを行う際には舌などが直に触れないように工夫する必要がありますが、なかなか実行しづらいかもしれません。

不特定多数や「行きずり」の相手と性行為をするときには、性器・粘膜に直に触れるようなセックス・オーラルセックスは避けるべきです。

薬用マウスウォッシュである程度淋菌を殺菌できるという研究もありますが、感染を予防できるほどの効果があるという証拠は出ていないようです。

6、まとめ

淋病は女性が感染しても無症状のことが多いため、知らない間に感染していたり感染を広げてしまったりするケースがよくあります。また、何度でも再感染が起こりえます。こうした特徴があるため、淋病はクラミジアと並んでとくに感染率が高い性病となっています。

将来的には薬の効かない淋菌が広まるのではないかという怖い話もありますが、現在のところは完治することができ、治療期間もたいしてかかりません。

パートナーや生まれてくる子供にまで感染させてしまうことのないよう、不安な症状があったり危険な行動をした覚えがあったりする場合には早期に検査・治療を行うようにしてください。

記事監修

坂東 重浩ばんどうクリニック堀切菖蒲園駅前 院長
東京慈恵会医科大学での泌尿器科診療をはじめ、内科や、腹腔鏡手術や内視鏡手術などの先端医療、皮膚科専門医の指導を受け皮膚科疾患診療にも従事。

〈資格〉日本泌尿器科学会 専門医・指導医/日本がん治療認定医/日本性感染症学会 認定医/日本医師会認定 産業医/泌尿器腹腔鏡技術認定医/難病指定医/緩和ケア研修終了/ 〈所属学会〉日本泌尿器科学会/日本内科学会/日本皮膚科学会/日本透析医学会/日本性感染症学会/日本泌尿器内視鏡学会/

http://bando-clinic.com/

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