保健所で梅毒検査を受ける方法とメリット・デメリット

梅毒 保健所

梅毒の検査は医療機関のほか保健所や自宅(検査キット利用)でも行うことができます。保健所では無料・匿名で検査が受けられるのが利点ですが、いくつかデメリットも存在します。他の方法とも比較しながら保健所で受けられる梅毒検査について解説していきます。
「ばんどうクリニック堀切菖蒲園駅前」院長であり泌尿器科専門医かつ性感染症認定医である坂東が監修した内容となっていますので、ぜひ参考にしてください。

1、梅毒は保健所で検査できる

2010年頃から日本で梅毒感染者が急増しています。これを受けて全国的に梅毒の検査体制が強化され、各地の保健所で梅毒検査が受けられるようになっています。

(1)急増中の梅毒

梅毒の感染者数は第2次大戦後に有効な治療薬(抗生物質のペニシリン)が普及するにつれて激減し、その後も減少を続けてきました。しかし、21世紀に入る頃から世界的に増加傾向が見られ、とくに日本では2010年頃から急増して流行のような状況になっています。背景には訪日する外国人や風俗店(とくにデリヘル)の増加があるとも言われています。

(2)そもそも梅毒の症状とは

梅毒は梅毒トレポネーマという細菌の侵入が原因となって起こり、段階的に進行して非常に多彩な症状を呈する病気です。進行段階は4つに分けられ、その間に症状がない期間があります。有効な治療が普及した現在では第3期以降に進行することはまれです

(3)いつから検査を受けたらよいか?

梅毒検査では血液を採取し、血液中に抗体(感染時に免疫の働きでできる物質)がどの程度存在するか調べます(抗体検査)。

梅毒に感染してから症状が現れるまでの期間(潜伏期間)は3週間程度で、抗体検査が可能になるまでにはさらに1週間程度かかるため、感染の機会があったと思われる日から1か月以上経過した時点で検査を受けることが推奨されています。

(4)保健所の性病検査のサービス内容

保健所での性病検査のサービス内容について解説します。

①検査対象の性病

国のエイズ予防政策に基づき全国の保健所でHIV検査が実施されており、梅毒検査についてはHIV検査の一環としてセットで行う(HIV検査は必須で、希望者のみ「ついで」に梅毒検査も行う)という形をとっている保健所と、梅毒検査単独でも受け付けている保健所があります。

そのほか、感染者数の多いクラミジア・淋病についても検査を行っている保健所がかなりあります。

②検査の予約

検査を受けるには事前予約が必要となるのが一般的ですが、なかには特定の日・曜日に予約不要で検査を受け付けている保健所もあります。

③検査結果

検査の結果がわかるまでに1週間程度かかる保健所と、検査当日に(1~2時間程度で)結果が出る即日検査を行っている保健所があります。即日検査であっても感染の有無がその場で判明しないケースもあり、その場合は確認のための検査が必要となり、2週間程度かかることがあります。

検査結果は電話・郵送通知などではなく面談・口頭で伝えられます。即日検査の場合は検査会場で待ち、そうでない場合は後日あらためて保健所に出向くことになります。

なお、無料・匿名での検査であるため検査結果の成績書・証明書類は発行していない保健所が大半ですが、希望者に有料(1,000~2,000円程度)での発行を行っている保健所もなかにはあります(この場合は匿名とはいかず、身分証明書の提示が必要になります)。

2、梅毒を保健所で検査するメリット

保健所のメリットは無料・匿名で検査が受けられることです。医療機関や検査キットを利用した場合と比較してみましょう。

(1)検査が基本無料

医療機関を受診した場合、自費診療(健康保険適用外)であれば検査だけで3,000円~5,000円程度、保険診療(健康保険適用)でも診察代と検査代を合わせて2,000円程度はかかります。

検査キットを利用する場合、通販で検査キットを購入し、自宅で検査材料(血液)を採取して送り返します。料金はキット代・検査材料返送代・検査代をセットにして3,000円台が相場です。

一方、保健所であればどこでも基本的に無料で検査を受けることができます。ただし保健所によっては、梅毒の症状や感染の不安がある人のみ無料とし、単なる健康診断目的の場合は数百円程度の手数料をとることがあります。

なお、この無料か有料かの基準は保険診療か自費診療かの基準と同様です。一般的に、性病らしき症状や感染の機会があり、感染が判明したら治療するという目的で医療機関を受診する場合は保険診療の対象となりますが、そうではなくて単に「感染の有無を調べたい」というだけで検査を行う場合は自費診療となります(ただし医療機関の方針にもよります)。

(2)匿名可能

保健所では無料な上に匿名で検査を受けられるということが大きなメリットです。
医療機関を受診した場合、保険診療を受けるには当然のことながら保険証を出す必要があり、匿名とはいきません。自費診療の場合は匿名での診察・検査が可能なクリニックもありますが、自費診療であるため高額の診察料・検査料・薬代・施術代がかかります(料金は医療機関が自由に決めます)。
匿名で検査を受けられるということはかなり大きなメリットと言えるでしょう。

3、梅毒を保健所で検査するデメリット

以下のような点が、デメリットとなることもあります。

(1)治療は医療機関で行うため二度手間になる

保健所で行うのは検査だけなので、結果が陽性(感染あり)であれば結局は治療のために医療機関を受診しなければなりません。大半の場合は医療機関でもう一度検査を行うことになります。そうなればもちろん検査代も発生します。

保健所で証明書を発行してもらえれば検査が不要になる場合もありますが、発行料金は保険診療の検査代と同じか高いくらいです。

(2)検査日が限られている

検査日程は保健所ごとにまちまちですが、少なければ月に1回、多くても週に1回程度です。日時・曜日が合わなくてなかなか検査を受けられないということもあるでしょうし、その間に病状が悪化したり他の人に感染させてしまったりする恐れもあります。
事前に近くの保健所の検査日を確認しておきましょう。

(3)人と対面する必要がある(検査キットと比べた場合のデメリット)

検査キットであればすべて非対面で済ませられますが、保健所の場合は検査を受けるときと検査結果を聞くときに人と顔を合わせることになります。
「知らない人だからべつにいい」という方であれば問題ありませんが、気になる方は検査キットを利用するのが良いかもしれません。

4、梅毒検査はどこで受けるのがよいか?

梅毒と思える症状がすでに出ている方は、初めから医療機関を受診したほうがよいでしょう。保健所で検査を受けても二度手間になる可能性が高く、治療開始が遅れることにもなります。

「はっきりした症状はないが(複数人との性交渉などにより)感染したかもしれないのでとりあえず検査しておきたい」という方や、医療機関を受診する踏ん切りがつかないという方には、保健所の無料検査がおすすめできます(二度手間になる可能性があることは承知しておいてください)。

先ほども述べたように、匿名とはいえ性病検査のために人と顔を合わせるのは気が引けるという場合には、検査キットを使用してみてもよいでしょう。

5、梅毒が完治するまで

最後に、梅毒感染が確認された場合どのような治療が行われるのかについて簡単にまとめておきます。

(1)梅毒の治療方法と治療期間

日本では主に飲み薬の抗菌薬(抗生物質)で治療が行われます。第1期・第2期であれば完治することが可能です。第3期以降でも病原菌を退治して進行を止めることはできますが、骨や臓器に生じてしまった損傷は元に戻せません。なるべく早期に治療を開始することが大切です。

治療にかかる期間は、第1期で2~4週間、第2期で4~8週間、第3期以降は8~12週間程度です。

(2)梅毒が治るまでにかかる費用

①初めから医療機関を受診した場合

初めから医療機関を受診した場合、保険診療なら診察代・検査代を合わせて2,000円程度、薬代が4週間分1,000円程度、合計で3,000円程度です。

自費診療となると料金は医療機関ごとにまちまちで、診察代・検査代を合わせて3,000円~8,000円程度、薬代が4週間分で10,000円~20,000円程度、合計13,000円~28,000円程度です。

②保健所で検査結果の証明書を発行してもらう場合

先に保健所で検査を行い、検査結果の証明書を発行してもらう場合には、1,000円~2,000程度かかります。この証明書を医療機関がどう扱うかは、それぞれの方針によります。

証明書を持参すれば医療機関での検査は不要となる(したがって検査代が浮く)場合もあれば、再検査が求められる(したがって発行代が無駄になる)場合もあります。事前に医療機関に確認しておくとよいでしょう。

③検査キットの料金

検査キットで検査する場合は3,000円~4,000程度かかります。検査結果はインターネット上で利用者自身が確認するか、電話・郵送により通知されます。保健所の証明書と同じく、検査キットの検査結果(表示画面や通知書面)をどう扱うかは医療機関の方針によります。

まとめ

梅毒は現在日本で急増しています。症状や感染機会に不安のある方は早めに検査を受けることをおすすめします。早期であれば完治が可能です。

保健所での検査は日程が限られており、感染が判明した場合には二度手間になってしまうというデメリットもあります。すでに梅毒特有の症状(しこりや赤い斑点など)が出ている場合は初めから医療機関を受診したほうがよいと思われます。
ですが、保健所では無料・匿名で検査を受けられるというメリットもあるため、そのあたりは自分自身とよく相談しながら対応しましょう。

まずは保健所で検査を受けようという方は、検査日程や予約方法などをよく確認してください。

記事監修

坂東 重浩ばんどうクリニック堀切菖蒲園駅前 院長
東京慈恵会医科大学での泌尿器科診療をはじめ、内科や、腹腔鏡手術や内視鏡手術などの先端医療、皮膚科専門医の指導を受け皮膚科疾患診療にも従事。

〈資格〉日本泌尿器科学会 専門医・指導医/日本がん治療認定医/日本性感染症学会 認定医/日本医師会認定 産業医/泌尿器腹腔鏡技術認定医/難病指定医/緩和ケア研修終了/ 〈所属学会〉日本泌尿器科学会/日本内科学会/日本皮膚科学会/日本透析医学会/日本性感染症学会/日本泌尿器内視鏡学会/

http://bando-clinic.com/

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