梅毒は妊婦でも感染する?妊婦に及ぼす影響を詳細解説!

梅毒 妊婦

近年、日本において梅毒の感染が急激に広がっています。妊婦の方は生まれてくる赤ちゃんのためにも、人一倍梅毒などの性感染症に気を遣わなければいけません。「もし、梅毒に感染していたらどうしよう…」このような不安を抱えている妊婦の方もいらしゃっるかと思います。本記事では、妊婦でも梅毒に感染するのか、また梅毒感染が妊婦に与える影響について、詳細を解説していきます。

1、妊婦でも感染する?梅毒とは

梅毒とは、梅毒トレポネーマと呼ばれる細菌が原因で発症する性感染症です。体内に侵入した梅毒トレポネーマは、数時間でリンパ節に到達して、全身に広がっていきます。

初期症状として、感染部位である性器やリンパ節の周辺に赤い発疹が出ることがありますが、中には初期症状がでない人もいるので症状が出ないからといって安心してはいけません。

まずは、梅毒と妊婦の関係について見ていきましょう。

(1)妊婦でも梅毒に感染する?

妊婦でも梅毒に感染する可能性はあります。

梅毒は基本的に性交渉を介して感染しますが、通常の性交渉に加えて、オーラルセックスやアナルセックスでも感染します。妊娠中の場合、通常の性交渉はできなくても、オーラルセックスを行うケースはありますので、妊婦の方でも梅毒感染に注意しなければいけません。

また、妊娠前に梅毒に感染して、そのまま妊娠に至った後、梅毒感染に気付くというケースもあります。

(2)梅毒だと妊娠できない?

梅毒に感染していても妊娠することは可能です。ただし後ほど詳しく述べますが、梅毒を治療せずに出産を迎えると、生まれてくる胎児に梅毒を感染させてしまうかもしれません。新生児は細菌・ウィルスに対する免疫が十分でないので、中には重篤な症状に陥ってしまうこともあります。梅毒に感染している場合は、出産までに梅毒を完治させましょう。

(3)梅毒の感染経路

①通常の性交渉

梅毒の感染経路は、感染者の粘膜・皮膚との直接接触になります。基本的には性交渉による感染が大半です。梅毒トレポネーマは空気中や水中では生存できないので、空気感染・水中感染することはまずありません。また、タオルや布団などを介して感染することも基本的にありません。粘膜同士が直接接触するのは、ほとんどが性交渉に限られます。

前述したように、通常の性交渉に加えてオーラルセックスやアナルセックスでも梅毒に感染します。コンドームを利用することで梅毒感染のリスクを抑えられますが、性行為の最初から最後まで、適切にコンドームを利用しないと効果は薄いので注意してください。

②風俗店の利用

性風俗店の利用に関しても同様です。利用者としては1人の女性と性行為をしているイメージですが、性風俗店で勤務する女性は1日に多数の男性客と接触します。梅毒が風俗店で蔓延してしまうと、一気に感染が広がってしまう可能性があるのです。

(4)梅毒の感染状況

令和元年における梅毒の感染者数は、全国で約13万人です。男性の感染者数は約86,000人、女性の感染者数は約44,000人になります。
性感染症報告数|厚生労働省のデータより、定点あたりの報告数を20倍した数値を元に算出。

梅毒感染者数は平成23年から増えてきており、特に過去5年間は急激に感染者数が増えています。感染者数が増えている原因として海外観光客の風俗店利用などが挙げられていますが、正確な原因は判明していません。国全体で何か対策を講じない限り、今後も梅毒の感染者数は増加していくでしょう。

2、妊婦が梅毒に感染しているとどうなるのか

妊婦が梅毒に感染すると、母体のみならず胎児にも影響を及ぼしてきます。

(1)早期出産の原因に

妊婦が梅毒に感染することで早期出産の原因になります。梅毒トレポネーマが子宮や周辺臓器に広がることで胎盤を刺激しまい、早期出産を促してしまうのです。早期出産をしてしまうと、胎児が未成熟の状態で生まれることになり、中には障害をもって生まれてしまうこともあります。

(2)新生児への感染

梅毒に感染した妊婦が、梅毒の治療を行わずに出産を行ってしまうと胎児に梅毒を感染させてしまう可能性があります。これを「先天梅毒」と呼びます。
その後、新生児として生まれた赤ちゃんに下記の2つが発症する恐れがあります。

  • 早期先天梅毒
  • 晩期先天梅毒

①早期先天梅毒

早期先天梅毒は、胎児が生後3ヵ月以内に発症する先天梅毒です。症状としては、手や足底に水泡・発疹が生じたり、リンパ腫の腫れなどが見られます。また、早期先天梅毒になると発育不全に陥る可能性が高く、中には髄膜炎、水頭症、知的障害が生じるケースもあります。

②晩期先天梅毒

晩期先天梅毒は、生後2年以降に発症する先天梅毒です。症状としては、鼻やその周辺に生じるゴム腫性潰瘍や肋骨の変形、身体麻痺、角膜実質炎などが挙げられます。中でも角膜実質炎は晩期先天梅毒で頻繁に生じる症状で、角膜に傷跡をつける要因になります。また、難聴を生じさせることもあり、症状を放置すると重篤な状態になることもあるため注意しましょう。

3、妊娠中に梅毒が発覚したらすべきこと

妊娠中に梅毒が発覚した場合、下記のことをすぐに行ってください。

  • すぐに医療機関で検査・治療を行う
  • パートナーには検査をしてもらう

(1)すぐに医療機関で検査・治療を行う

妊娠中に梅毒が発覚した場合、すぐに医療機関で検査・治療を行うようにしてください。梅毒の症状は、他の性病と比べると症状が特徴的です(赤紫色の発疹ができる等)。少しでも梅毒と疑われる症状がでたら、検査を受けるようにしましょう。

また、梅毒の症状が出ていないとしても、妊娠初期に梅毒検査を必ず受けなければいけません。母子健康手帳には梅毒など各種性病検査の記入欄があるので、検査結果を該当箇所に記入します。

女性の性病は基本的に診断をしてもらった婦人科で治療に入ります。性病に感染した場合は婦人科からそのまま薬の処方を受け、治療を進めていきましょう。梅毒治療ではペニシリン系抗菌薬の服用を行います。処方された抗菌薬は、医師の指示に必ず医師の指示に従って服用するようにしてください。自身の勝手な判断で服用量を変えたり、服用を中止してはいけません。指示通りに服用しないと、菌が抗菌薬に耐性をもってしまい、完治までに時間がかかる可能性があります。

(2)パートナーには検査をしてもらう

梅毒感染が発覚した場合は、パートナーにも検査を受けてもらいましょう。妊婦側のみが検査・治療を行ったとしても、パートナーが梅毒に感染していては、再度感染してしまうリスクがあります。どちらが先に梅毒に感染したか気になるところではありますが、症状発生までの期間は個人によって差があるので、正確な感染時期を把握するのは難しいです。あくまでも、互いの体を思いやるという気持ちをもって、検査・治療を受けるのが大切です。

パートナーが梅毒に感染していた場合は、情報共有という面でもなるべく同じ医療機関で治療を受けるようにしましょう。婦人科のみしか診療科がない場合は、男性側は別の病院に行くしかありませんが、その場合も治療状況の共有は欠かさず行うようにしてください。

4、妊娠はしていないが予定がある方は事前に梅毒検査を

梅毒検査は妊娠初期に必ず受ける検査ではありますが、妊娠してから検査を受ければ良いというものではありません。梅毒は早期発見、治療が非常に大切になります。症状が初期の段階で治療できれば、完治までの期間を短くすることができます。妊娠する予定がある方は事前に検査を受けるようにしてください。

梅毒の検査方法には、

  • 医療機関で検査する
  • 自宅で検査キットを使用する

の2つの方法があります。

(1)医療機関で検査する

医療機関での検査は、主に精密検査を行います。
精密検査ではかなり正確な検査結果を知ることができます。結果が分かるのは検査を受けてから約2日~7日後で、検査費用はおおむね2500円~10,000円ほどです。保険適用か非適用かで検査費用に差がありますので、受診予定の病院がどちらなのか事前に確認しておきましょう。

(2)自宅で検査キットを使用する

もう一つの検査方法として、自宅で検査キットを使用する方法があります。検査では採血を行う必要がありますが、検査キットを利用する場合は注射針でなく、専用のピアッサーのようなキットを利用します。小さい針が飛び出る仕組みのキットで、指の腹を一瞬刺して血液を採取します。痛いというよりも「チクっ」とする感覚です。初めて利用する場合でも簡単に扱えるので、利用に際して特段心配する必要はありません。

病院で採血する場合は、血管に注射針を刺すことになるので、これと比べると検査キットでの採血は痛みの面でも負担が少ないです。

検査キットの費用は、3,000円~5,000円ほどになります。梅毒の検査キットの中には、他の性病検査も同時に行えるものもあり、非常に便利です。複数の性病検査ができるキットだと、5,000円を超えるものもありますが、医療機関で1つずつ検査を受けるよりも費用はずっと安いです。

検査キットで梅毒検査を行った場合、結果が分かるのは郵送してから約1週間後になります。検査結果はWeb上で確認できるので、結果表が家族やパートナーに見られることも防げます。

仕事で病院に行くのが難しい場合、また検査費用を抑えて手軽に検査をしたい場合は、検査キットを使って検査を行うようにしましょう。

まとめ

妊婦の方でも梅毒に感染する可能性は十分あります。梅毒は通常の性行為以外にも、オーラルセックスやアナルセックスでも感染します。梅毒に感染しても、初期症状が出ないこともあるので、症状が出ないからといって安堵してはいけません。

梅毒の治療をせずにそのまま出産をしてしまうと、胎児に梅毒が感染することもあります。妊娠初期の段階で、梅毒の検査は必ず行われますが、だからといって梅毒の検査をギリギリまで受けないというのは得策ではないです。妊娠前に梅毒感染が分かれば、治療を進めて万全の状態で妊娠を迎えることができます。検査キットを使えば、自宅で簡単に梅毒検査ができるので、まずは一度梅毒の検査を行うようにしましょう。

記事監修

坂東 重浩ばんどうクリニック堀切菖蒲園駅前 院長
東京慈恵会医科大学での泌尿器科診療をはじめ、内科や、腹腔鏡手術や内視鏡手術などの先端医療、皮膚科専門医の指導を受け皮膚科疾患診療にも従事。

〈資格〉日本泌尿器科学会 専門医・指導医/日本がん治療認定医/日本性感染症学会 認定医/日本医師会認定 産業医/泌尿器腹腔鏡技術認定医/難病指定医/緩和ケア研修終了/ 〈所属学会〉日本泌尿器科学会/日本内科学会/日本皮膚科学会/日本透析医学会/日本性感染症学会/日本泌尿器内視鏡学会/

http://bando-clinic.com/

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