性病について、種類ごとの症状や感染経路についてご存知でしょうか。下半身に違和感が出ても、一概にどの性病か判断するのは難しいでしょう。
そのまま放置しているとどのようなリスクがあるのかも気になるところだと思います。
そこで本記事では、「ばんどうクリニック堀切菖蒲園駅前」院長であり泌尿器科専門医かつ性感染症認定医である坂東が、性病の種類と症状について詳細をまとめました。
気になる症状や感染の不安がある方はぜひ一読して、当てはまる病気がないかどうかチェックしてみてください。
それ以外の方も、感染予防の知識を高めるためにご活用ください。
他にも性病の検査費用はどれくらい?安く手軽な検査方法や治療法とはについて気になる方はこちらの記事も合わせてご覧ください。
1、性病の種類と症状
それでは、性病の種類と症状について解説していきます。
(1)クラミジア
①クラミジアの原因と感染経路
世界的に最も感染者数が多い性病で、クラミジア・トラコマチスという細菌により引き起こされます。
膣性交やオーラルセックスにより、男性の尿道、精巣上体(副睾丸)、女性の子宮頸管、骨盤内部(卵管など)、男女の喉などに感染します。
母親の女性器が感染していると分娩時に新生児にクラミジアがうつる(母子感染する)場合もあるため、妊婦の方は検査をしましょう。
②クラミジアの症状
男性尿道への感染では、尿道の不快感、排尿時の軽い痛みなどが生じることがありますが、無症状のケースも少なくありません。潜伏期間は1~3週間程度と言われています。
睾丸の横にある精巣上体に感染した場合、陰嚢が腫れたり痛くなり、軽い発熱が生じたりします。
女性器の場合、感染後1~3週間で子宮頸管に炎症が生じます。
おりものの増加や下腹痛などが起こることもありますが、まったく自覚症状が現れない場合のほうが多いと言われています。さらに子宮、卵管、骨盤などに感染が広がっていきます。
喉への感染(咽頭クラミジア)の場合は症状が出ることは基本的にはありません。
もし症状が出るとするならば、喉のはれや痛み、耳の詰まった感じや難聴などの症状が生じることもあります。
③クラミジアを放置すると?
女性器への感染を放置すると、分娩の際に新生児に感染し、結膜炎や肺炎を引き起こす恐れがあります。
また、卵管などに炎症が広がると、子宮外妊娠や不妊症、流産・早産の要因にもなります。
(2)淋病(淋菌感染症)
①淋病の原因と感染経路
淋菌によって引き起こされる感染症で、クラミジアに次いで感染者数の多い性病です。
膣性交・肛門性交・オーラルセックスにより、主に男性の尿道・精巣上体、女性の子宮頸管・骨盤内部、男女の喉・直腸に感染します。
クラミジアと同様に母親の性器から新生児に感染する恐れがあります。
②淋病の症状
男性尿道への感染では2~7日の潜伏期間ののち尿道から膿のような分泌物が出て、排尿時に痛みを感じます。さらに精巣上体に感染が広がり、陰嚢が大きく膨れたり強い痛みが生じたりします。
女性の場合、クラミジアと同じく子宮頸部の炎症に始まり、骨盤内部へと感染が広がります(潜伏期間は不明です)。
おりものの増加や不正出血、下腹痛などが生じることもありますが、無症状のケースもよくあります。
そのほか、尿道に炎症が起こり排尿時に異常を感じる場合もあります。
喉への感染(咽頭淋病)の場合、無症状のケースが大半ですが、喉や扁桃にはれや痛みが生じることもあります。
肛門への感染でも無症状が大半ですが、まれに肛門のかゆみや下痢・血便などが見られます。
③淋病を放置すると?
女性器の感染を放置すると、新生児への感染(結膜炎)、子宮外妊娠、不妊症の原因になります。
(3)梅毒
①梅毒の症状と感染経路
梅毒トレポネーマという細菌の侵入で発症する病気です。
2010年頃から日本で感染者が急増しています。
性行為時に感染者の病変部位(性器や皮膚など)に粘膜・肌が直に触れることで感染します(キスでも感染する恐れがあります)。
また、妊婦が梅毒に感染していると胎盤を介して病原菌が胎児に伝わることがあります。
②梅毒の症状
梅毒は段階的に進行し、体のさまざまな部位に症状を引き起こします。
第1期(感染後3週間~)には感染部位(亀頭、包皮、陰唇、子宮頸部、唇など)にしこりができ、しばらくすると表面が破れ、やがて自然に治まります。
しかし、症状が治まっただけで治ったわけではありません。
第2期(感染後3か月~)には胴体や手足に赤い斑点ができ、さらに皮膚や外陰部・肛門周辺にできものが生じたり、口内・口角に腫れやただれが生じたりします。
これらの症状は徐々に消失していきます。
さらに進行すると、骨や臓器にゴム状の腫れものができて組織が破壊され(第3期)、心臓や神経に障害が生じます(第4期)。
③梅毒を放置すると?
第1期・第2期の段階で治療すれば完治可能ですが、放置して第3期になり組織が破壊されてしまうともとに戻すことはできません。さらに第4期になれば生活に大きな支障をきたします。
第1期・第2期の梅毒を放置したまま出産すると60~80%の高確率(第3期以降では20%程度)で子どもに感染し、皮膚・臓器の異常、発育不全などを引き起こします。
(4)HIV感染症・エイズ
①HIV感染症・エイズの原因と感染経路
HIVというウイルスが感染した状態がHIV感染症で、長い無症状期間を経て免疫力低下の症状が現れた状態をエイズと呼びます。
HIVは血液・体液を介して感染しますが、感染力が弱いため、感染経路はほぼ性行為に限定されます。
それ以外では、HIVを含む血液・体液が付着した注射器・刃物・歯ブラシなどを使用することでも感染する恐れがあります。
また、HIVに感染した母親の胎盤、産道、母乳を介して子どもが感染する場合もあるため、妊婦の方は注意が必要でしょう。
②HIV感染症・エイズの症状
初感染期(感染後2~6週間)には、発熱、リンパ節の腫れ、喉の痛み、筋肉痛など、インフルエンザに似た症状が出ます(まったく無症状の人もいます)。
数年から10数年は無症状のまま経過したのち、免疫力が低下してエイズとなります。
健康であれば問題にならないような毒性の弱い病原体に感染して重症化したり、悪性腫瘍ができやすくなります。
③HIV感染症・エイズを放置すると?
HIVの増殖を抑える治療を継続的に行わなければ、やがてはエイズ状態になり、何らかの感染症や悪性腫瘍により死に至ります。
また、治療と感染予防対策により母子感染率は約0.6%まで抑制できますが、何も行わなければ15~30%の確率で母子感染します。
(5)ヘルペス
①ヘルペスの原因と感染経路
単純ヘルペスウイルスにより起こる感染症です。感染すると症状が治まったあともウイルスが神経のなかに潜伏し、折に触れて再発を引き起こします。
単純ヘルペスウイルには1型と2型があり、1型は病変部との接触や飛沫感染などを通して主に上半身(口・唇・顔・手指)に感染するほか、オーラルセックスにより性器に感染する場合もあります。2型は主に性行為により下半身(性器や臀部)に感染します。
②ヘルペスの症状
感染部位に小さな水ぶくれが密集してできたりただれが生じたりするのが基本的な症状で、痛みやかゆみ、違和感を伴います。ただし、大半の人(約90%)は感染しても発症しないと言われています。
潜伏期間は2~10日ほどで、初感染で発症した際にはかなり強い症状が現れるのが一般的です(再発時には症状が比較的軽くなります)。
喉への感染では食事に差し支えるほどの痛みや高熱、女性器への感染では排尿・歩行が困難なほどの強い痛みや高熱が生じます。男性器の場合も比較的重い水ぶくれ・ただれができ、痛みを伴います。
③ヘルペスを放置すると?
治療しなくても症状は治まりますが、しばしば再発します。また、分娩時に女性器にヘルペスの症状が出ていると子どもにうつる恐れがあり、ヘルペスに感染した新生児の2割から3割は死に至ります。
しばしば再発するようなことがあれば、一度検査をしてみましょう。
(6)カンジダ
①カンジダの原因と感染経路
カンジダ属の菌(真菌)によって引き起こされる感染症です。この菌も主に性行為によって感染します。
しかし、カンジダに感染しただけでは症状は発症しません。
- 病気や妊娠などで抵抗力が落ちる
- 薬剤や洗剤の使用で体の環境が変わる
- 抗生物質で他の病原菌が排除される
などが誘因となって急激に増殖し、症状を引き起こします(こうしたタイプの感染症を日和見感染症と呼びます)。
②カンジダの症状
カンジダ感染で症状が出るのは主に女性です。
外陰部や膣にかゆみや痛みが生じ、おりものが増加したり、ヨーグルト状になってかたまりが残ったりします。
対して、基本的に男性が発症することはありません。
もし発症した場合、亀頭にかゆみ、違和感、赤み、小さな水ぶくれなどが生じます。
③カンジダを放置すると?
体の抵抗力が回復するなどすれば自然に症状が治まることもありますが、再発する可能性があり、発症を引き起こす誘因を取り除かなければ再発が繰り返される恐れもあります。
(7)ヒトパピローマウイルス感染症(尖圭コンジローマなど)
①ヒトパピローマウイルス感染症の原因と感染経路
ヒトパピローマウイルス(HPV)の侵入によって起こる感染症です。
このウイルスにはたくさんのタイプがあり、尖圭コンジローマを引き起こしたり癌の要因になったりします。
性行為の最中に、肌・粘膜が発症部位(陰茎、陰嚢、外陰部、膣、肛門周辺など)に直に触れることで感染するのが一般的です。
発症部位に接触した手指や物を介して間接的に感染する例もまれにあります。
また、分娩時に母子感染が起こることもあります。
②ヒトパピローマウイルス感染症の症状
感染後3週間~8か月ほどしてから表面にブツブツした突起のあるイボが生じることがあり、尖圭コンジローマと呼ばれます。
発症部位は、男性の亀頭、冠状溝(カリ首)、包皮、陰嚢、女性の外性器、膣、子宮頸部、男女の肛門周辺、肛門内、尿道などです。
イボができても小さかったり見えにくい場所にあったりするせいで気づかないことがよくありますが、イボのできる場所や大きさによっては違和感や痛み、かゆみが生じます。
少しでも違和感を感じたら疑いを持って検査をしてみても良いでしょう。
③ヒトパピローマウイルス感染症を放置すると?
尖圭コンジローマの2割から3割は治療しなくても自然治癒すると言われていますが、ヒトパピローマウイルスのなかには癌(子宮頚癌、外陰癌、膀胱癌、咽頭癌)につながりやすいタイプがあり、他の要因と合わさることで癌が発症すると考えられています。
また、出産時に母親から新生児に感染すると呼吸不全をきたします。
(8)毛じらみ
①毛じらみの原因と感染経路
ケジラミという昆虫が陰毛の生えた部位に寄生する病気です(肛門周辺や腿、脇、胸の体毛、頭髪や眉毛にも寄生する場合があります)。
寄生したケジラミは皮膚から血を吸って生活します。
ケジラミが寄生した部位(とくに陰毛)に直に接触することで感染します。
ほとんどは性行為による感染ですが、それ以外でも家庭内などで密接な接触があれば感染することがあります。
ケジラミは、単独でも48時間程度は生存する可能性があり、共用のタオルや毛布などを介して間接的に感染する場合もあります。
家にある衣類、寝具、タオルなどにアイロンや洗濯乾燥機などで熱処理を行う必要があります。
②毛じらみの症状
血を吸われた箇所にかゆみが生じます。
かゆみを自覚するようになる時期は個人差がありますが、感染後1か月~2か月の頃が多いと言われています。
かゆみの程度にも個人差があり、強烈なかゆみになることもあります。
③毛じらみを放置すると?
かゆみのために皮膚を強く掻いて傷つけてしまい、皮膚炎になったり、別の病原菌が感染したりする恐れがあります。
また、寄生が長期間におよぶと青っぽいあざができる場合があります。
(9)マイコプラズマ・ウレアプラズマ
①マイコプラズマ・ウレアプラズマの原因と感染経路
マイコプラズマ・ジェニタリウムやウレアプラズマ・ウレアリチカムを初めとした細菌により引き起こされる感染症で、クラミジアと同様の症状を呈します。
性行為により感染します。
クラミジアと症状はほぼ共通していますが、病原菌の性質や治療法は異なり、病原菌によってはまだ治療法が確立されていないものもあります。
②マイコプラズマ・ウレアプラズマの症状
クラミジアと同様。
③マイコプラズマ・ウレアプラズマを放置すると?
クラミジアと同様。
(10)トリコモナス
①トリコモナスの原因と感染経路
膣トリコモナス原虫という微生物(寄生虫)によって引き起こされる感染症です。
男女の性器に感染し、とくに女性の膣と男性の尿道の奥にある前立腺や精嚢に生息して繁殖します。
主に膣性交を介して感染が起こりますが、膣トリコモナス原虫は人の体から離れてもある程度生きながらえることができるため、共用のタオルや浴槽、便器、検診台などから感染する例もあります。
②トリコモナスの症状
男性の場合は尿道の炎症を引き起こすことがありますが、大半は無症状です。
女性の場合は感染後1~3週間程度で膣の炎症が生じ、泡状で悪臭を放つおりものが出たり、外陰部や膣にかゆみや痛みが生じたりします。
ただし2割から5割程度の人は無症状です。
さらに子宮頸管や下部尿路(膀胱から尿道までの部分)にも感染が広がることがあります。
③トリコモナスを放置すると?
妊娠中の感染を放置すると早産につながる恐れがあります。
(11)A型肝炎・B型肝炎・C型肝炎
①A型肝炎・B型肝炎・C型肝炎の原因と感染経路
A型・B型・C型という3種類の肝炎ウイルスによって起こる感染症です。
A型は感染者の便に排出されたウイルスが何らかの経路で口に入ることで感染します。
不衛生や性行為などが原因となります。
B型肝炎ウイルスは血液、精液、膣分泌物に多く含まれており、性行為や注射器などの使い回しで感染するほか、出産時の母子感染も起こります。
C型は血液を介して感染し、注射器・入れ墨の針・脱毛処置具などの使い回しや、輸血(管理体制に問題がある場合)が原因になるほか、低確率ながら性交渉でもうつる可能性があります。
②A型肝炎・B型肝炎・C型肝炎の症状
A型は2週間から7週間程度の潜伏期間ののちに発症し、発熱、倦怠感に続いて食欲不振や吐き気が起こり、さらに高確率で黄疸(皮膚や眼が黄色くなる症状)が現れます。
B型は感染後1~6か月で微熱や食欲不振、倦怠感、吐き気、みぞおちの痛みなどが生じ、続いて黄疸が現れます。
C型は感染後2~3か月で肝障害が起こり、3割から4割の人は自然に治りますが、それ以外は慢性化します。
③A型肝炎・B型肝炎・C型肝炎を放置すると?
A型とB型はほとんどが自然に治りますが、まれに命にかかわる激烈な症状が起こる場合があります。
慢性化したC型肝炎を放置すると、肝硬変や肝臓癌に進行する恐れがあります。
それぞれの違いをよく理解しておきましょう。
(12)赤痢アメーバ症
①赤痢アメーバ症とは
赤痢アメーバという微生物により引き起こされる感染症です。
肛門へのオーラルセックスなどで感染者の便の一部が口に入ったり、不衛生な環境で病原体が付着した食物を口にしたりすることで感染します。
体内に侵入した赤痢アメーバは大腸に棲みつき、肝臓などにも広がることがあります。
②赤痢アメーバ症の症状は
大腸炎により、下痢、粘血便(粘液と血液が混じった便)、排便時の痛み、テネスムス(明確な便意はあるのに便がほとんど出ない状態)が起こります。
潜伏期間は通常2~4週間ですが、数か月~数年という例もあります。
感染が肝臓に広がった場合の症状は、発熱や上腹部痛、肝腫大(肝臓が腫れて大きくなる症状)、寝汗などです。
③赤痢アメーバ症を放置すると?
大腸炎の症状は数日~数週間のサイクルでよくなったり悪くなったりを繰り返しながら慢性化します。
2、性病の種類に限らず症状がでたら検査を

性病を放置するとパートナーや子どもにも感染を広げる恐れが高く、生活の質が大きく低下したり重症化したりする例もあります。
気になる症状がある場合、早めに検査を受けて感染の有無を確かめることが重要です。
検査を受けるには医療機関を受診するか、郵送の検査キットを利用します。
後者の場合、検査専門機関から通信販売で検査キットを購入し、自宅で検査材料(血液など)を採取して返送するだけで検査が行えます。
誰とも対面せずに手軽に検査を受けられるのは大きなメリットではないでしょうか。
性病の明確な症状がすでに出ているようであれば、すぐに治療へ移行できる医療機関での検査を検討しても良いでしょう。
まとめ
性病の種類や症状は様々ですが、その大半は自然に治ることはありません。
セルフチェックで感染の可能性が判明したら、なるべく早く検査・治療を受けて感染拡大や重症化を防ぐことが大切です。
また、今後の感染予防のため、感染の疑いがある病気以外についても症状や感染経路を一通り把握しておくことをすすめします。
記事監修
- ばんどうクリニック堀切菖蒲園駅前 院長
-
東京慈恵会医科大学での泌尿器科診療をはじめ、内科や、腹腔鏡手術や内視鏡手術などの先端医療、皮膚科専門医の指導を受け皮膚科疾患診療にも従事。
〈資格〉日本泌尿器科学会 専門医・指導医/日本がん治療認定医/日本性感染症学会 認定医/日本医師会認定 産業医/泌尿器腹腔鏡技術認定医/難病指定医/緩和ケア研修終了/ 〈所属学会〉日本泌尿器科学会/日本内科学会/日本皮膚科学会/日本透析医学会/日本性感染症学会/日本泌尿器内視鏡学会/
http://bando-clinic.com/
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