「最近、陰部に強いかゆみを感じる…何か性病に感染したかもしれない…」
このような悩み・不安を抱えている方、もしかすると「毛じらみ」に感染しているかもしれません。毛じらみに感染すると、陰部など感染部位にかゆみが生じてきます。
毛じらみは性感染症の一種で、適切な治療を行わないと症状が悪化してしまうこともあります。
本記事では毛じらみの症状について、症状が出た際に行うべきことなども合わせて解説していきます。記事を読んで頂くことで、毛じらみの症状など、毛じらみに関する情報を把握することができます。
自分が毛じらみに感染しているか不安な方は本記事を参考にして頂き、しかるべき処置を行っていきましょう。
1、毛じらみの症状
毛じらみは性感染症の1つですが、他の感染症とは症状が異なります。
毛じらみの場合は、皮膚表面のかゆみが主な症状です。
多くの性感染症に見られる性器や粘膜の炎症などの症状はほぼ見られません。
毛じらみによってかゆみが生じる部位は男女によって異なることもあります。
女性・男性でそれぞれどの部位に毛じらみの症状が出やすいのか確認していきましょう。
(1)女性に生じる症状
毛じらみは体毛に付着するため、毛がない部位に感染することはありません。
女性の場合は男性と比べて体毛がある部位が少ないため、かゆみが生じる部分は限定的になることが多いです。
①毛じらみが生じる部位
胸毛や腋毛といった部位は、女性の多くがケアをしていることもあり、毛じらみが付着することは稀です。ただし、陰部など体毛が残っている部位に関しては毛じらみに感染する可能性が高くなります。
②毛じらみの症状
毛じらみに感染してから1ヵ月~2ヵ月ほどで感染部位にかゆみが生じてきます。かゆみの程度には個人差があり、我慢できないほどのかゆみが出ることもあれば、少しかゆい程度で収まる人もいます。
ただ、初期のころは軽症で済んでいても、感染が長期に渡ることで毛じらみの数が増えてしまい、結果的に症状が重くなってしまうこともあるので注意しなければいけません。
(2)男性に生じる症状
男の症状も基本的には女性同様です。
①毛じらみが生じる部位
男性の場合、女性よりも体毛がある部分が多いため、毛じらみの感染が広がりやすいです。女性と比べて体毛処理を行う習慣がない人が多い点も、毛じらみの感染リスクを高める要因となっています。
②毛じらみの症状
女性と同様、男性の場合も陰部や胸毛、腋毛、肛門付近など体毛がある部分に毛じらみが付着することでかゆみが生じてきます。
男性もかゆみには個人差があるため、過度なかゆみが生じない場合は毛じらみの感染に気付きにくいです。
2、毛じらみの現状
一度付着した毛じらみは通常のシャンプーや石鹸などでは落としきれません。
そのため、一見清潔を保っているようでも感染している可能性があります。
そもそも、毛じらみとはどのような虫なのか、現状の感染者数や感染経路などと合わせて確認していきましょう。
(1)そもそも毛じらみとは?
毛じらみとは、シラミと呼ばれる虫の一種です。
人間の毛に寄生して、皮膚から血液を吸い取って栄養にしていきます。
他のシラミでは、アタマジラミやコロモジラミが有名ですが、毛じらみはこれらのシラミとは別の種類となります。
大きさは1mm程度。全体的に褐色を帯びた白色の体で、円形に近い形をしています。
肉眼で見えることもありますが、初見で毛じらみと判断するのは難しいです。
毛じらみが皮膚から吸血する際に、皮膚にかゆみが生じてきます。
毛じらみの唾液が皮膚に触れることで生じるアレルギー反応がかゆみの原因であるとも考えられています。
毛じらみは卵を毛の根元付近に産んでいきます。
産み付けられた卵はセメントのような物質で固定されているため、指ではがすことは困難です。
1本の毛に複数の卵を産んでいくため、毛じらみが増殖してしまう要因となっています。
毛に産み付けられた卵は約7日後に孵化して、3~4週間ほどで成虫になります。
成虫は3~4週間ほど生存して、同様に卵を産んでいきます。
(2)毛じらみの感染者数
毛じらみの感染者数は、厚生労働省の性感染症感染者数の公表データに含まれておらず、正確な数は公式に発表されていません。
ただ、感染者数自体は年々減少傾向にあるとされています。
毛じらみの感染者数が公表されていない要因として、他の性感染症よりも感染者数が少ない点が考えられます。
また、毛じらみが性感染症として広く認知されていない点も要因かもしれません。
ただ、感染者数が少ないからといって油断してはいけません。
毛じらみと思しき症状が出てきたら、放置せずに治療を受ける必要があります。
(3)毛じらみの感染経路
毛じらみの感染経路は主に「性行為」です。
毛じらみに感染している人と性行為を行うことで感染部位に接触してしまい、毛じらみに感染してしまいます。
毛じらみは体毛から離れると48時間ほどしか生存できません。
また、1日で移動できる距離は10cmほどであるため、主な感染経路は性行為による直接接触となります。
ただ、毛じらみに感染した人が使用したタオルや毛布、寝具などを通じて感染することもあるので、注意しなければなりません。
間接的に感染してしまうこともあるため、パートナーのみならず家族にも感染を広げてしまう可能性があります。
3、毛じらみの症状を放置し続けるとどうなるのか
毛じらみの症状を放置し続けると、どんどんかゆみが強まるでしょう。
かゆくなった部分を掻きむしってしまうと、湿疹や細菌性の感染症が発症してしまうこともあるので要注意です。
毛じらみの刺咬が長期に渡ると、皮膚の深層部分にヘモジデリンと呼ばれる色素が沈着してきます。ヘモジデリンが沈着すると、皮膚に青灰色の斑点が生じてしまうため、皮膚の状態が良くないように見えてしまいます。
沈着が酷くなると跡が消えにくくなってしまうので、早期の治療が肝要です。
4、毛じらみの症状が出たときにしてはいけないこと
毛じらみの症状が出た場合、性交渉を行うことは厳禁です。
パートナーに毛じらみを感染させてしまう可能性があるので、毛じらみと思しき症状が出たら治療を終えるまで性交渉は控えるようにしてください。
通常の性交渉のみならず、オーラルセックスも行ってはいけません。オーラルセックスの際に、陰毛に付着した毛じらみがパートナーの眉毛、まつ毛、頭髪に感染する可能性があります。
毛じらみの症状が出たときは家族共有で使うものにも注意を払いましょう。
タオルや布団などは共有で使わずに、自分用と家族用で分けると安心です。
5、毛じらみの症状が出たときにすべきこと
毛じらみの症状が出たときは、そのまま放置せずに毛じらみの感染を疑って行動するようにしましょう。
毛じらみは放置していても完治しません。
むしろ放置することによって症状が悪化してしまうことが多いです。
毛じらみの症状が出た際は、下記の3つのこと迅速に行ってください。
- パートナーに報告
- 医療機関で診てもらう
- 陽性であれば治療を
(1)パートナーに報告
毛じらみに感染したら、まずはパートナーに報告するようにしましょう。
毛じらみは性交渉によって感染する確率が高く、自身が毛じらみに感染した場合、パートーナーも毛じらみに感染している可能性があります。
自分のみが毛じらみの治療を行ったとしても、パートナーが感染したままだと再び毛じらみに感染してしまいます。
パートナーに毛じらみの症状が出ていなくても、一緒に検査・治療を受けるようにしてください。
(2)医療機関で診てもらう
毛じらみの感染有無の確認は皮膚科、泌尿器科などの医療機関のみで行えます。
他の性感染症のように検査キットで検査することができないので注意しましょう。
医療機関では毛じらみが付着しているかどうか診察されます。
採血検査などは行われません。毛じらみが付着していることが確認されたら、そのまま治療に入っていきます。
(3)陽性であれば治療を
毛じらみの感染が発覚したら、専用の医薬品を使って治療を行っていきます。
毛ジラミ成虫の駆除専用医薬品としてスミスリンシャンプー、スミスリンパウダーが市販されています。
3日に1度(1、4、7、10日目)スミスリンを使用します。
パウダー製剤よりシャンプー製剤の方が使用しやすいでしょう。
薬用シャンプーは毛じらみの成虫にのみ有効です。
毛じらみの卵は硬い殻に覆われていて約7日で孵化するため、3日に1度スミスリンを使用し成虫を駆除します。
また、それに加えて付属している専用のクシで毛から孵化前の卵をすき取ります。
家族内での感染拡大を防ぐために、衣服や寝具などはドライクリーニング、アイロンなどで熱処理していきます。
毛じらみは熱に弱いため、熱処理を加えることで死滅させることが可能です。
毛じらみに感染していた場合、他の性感染症に感染している可能性もあります。
受診している医療機関で他の性感染症の検査も合わせて行ってもらいましょう。
まとめ
毛じらみの症状は、陰部などの感染部位に生じるかゆみになります。
かゆみの程度には個人差があるため、症状が軽いと毛じらみに感染したことに気づけないケースもあります。
少しでも、陰部などにかゆみが出てきたら毛じらみを疑った方が良いでしょう。
毛じらみの検査は医療機関のみで行えます。
検査キットを利用して検査することはできないので注意してください。
毛じらみを放置しても、自然に治ることはまずありません。
治療せずに放っておくと毛じらみの数がどんどん増えていき、かゆみが酷くなることもあります。
早期発見・早期治療が完治させる上で重要です。
毛じらみと思しき症状が出たら医療機関ですぐに診察を受けて、治療を行うようにしましょう。
記事監修
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東京慈恵会医科大学での泌尿器科診療をはじめ、内科や、腹腔鏡手術や内視鏡手術などの先端医療、皮膚科専門医の指導を受け皮膚科疾患診療にも従事。
〈資格〉日本泌尿器科学会 専門医・指導医/日本がん治療認定医/日本性感染症学会 認定医/日本医師会認定 産業医/泌尿器腹腔鏡技術認定医/難病指定医/緩和ケア研修終了/ 〈所属学会〉日本泌尿器科学会/日本内科学会/日本皮膚科学会/日本透析医学会/日本性感染症学会/日本泌尿器内視鏡学会/
http://bando-clinic.com/
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